癒しの家プロジェクト(草の根無償)
草の根無償援助は日本政府の社会的弱者への直接的な援助として、各国の日本大使館が窓口となって実施している。タイでは、年間20件程度の案件を実施している。担当者は、特に要請を行うタイのNGOが持続的に事業を実施できるかどうかの見極めに配慮しているとのことであった。タイでは1993年に一般プロジェクト無償が終了していることから、草の根無償は日本政府による現地社会の末端への直接的な援助として意義深い。
草の根無償援助は通貨危機対策として始まったスキームではないが、1998年当時の小渕外相により予算が1億円から2億円に増額された。これは通貨危機により社会的弱者がうける影響を緩和しようと配慮したものであった。 |
![]() 写真1 草の根無償によって整備された寮 |
我々の訪問したパヤオ県ドクタムタイ郡の「癒しの家プロジェクト」はエイズ孤児、少数民族の子供のための通学支援を主な目的としている。もともと古い家屋を子供たちの寮として使い14人の子供の支援を行っていたが、草の根無償資金により2階建ての寮が整備され、現在は44人の子供が生活し、学校(小学校から高校まで)に通っている。
NGOの主催者によると、プロジェクトを運営する資金はタイ国内や海外からの寄付、プロジェクトで飼育・栽培している家畜・野菜の販売により確保することができるが、施設を作るなど、投資のための資金を準備することが困難で、草の根無償が大変役に立ったということであった。調査チームでは、大使館の関係者の努力によって、きめ細かい良質な援助が行われているとの印象を持ったが、反面、大使館の担当者には大きな負担になっていること、事業の成果をタイの人々、日本の人々により広く知ってもらうことが課題であると感じた。
家内工業就労ガイダンス(タイ国内研修)
「家内工業」とは、工場や会社ではなく、自宅などで契約に基づいて仕事をする状態である。タイ政府はインフォーマルセクターのフォーマルセクターへの引き上げのために、1980年代から家内工業労働者の安全性の確保や所得の向上のための研修を行ってきた。アジア通貨危機によって都市で働いていた人々が職を失って故郷に帰り、新たに家内工業を始める現象が見られたことから、国際協力事業団(JICA)はアジア通貨危機対策として研修の支援を行った。現地調査を行ったチェンライ県チェンコン郡では1999年3月に研修が行われた。
インタビューに集まった人たちは、洋服、ほうき、伝統的な生地、カバンの製造などを行っている。これらの事業は農家の女性が行っており、農閑期の現金収入の獲得や地域のコミュニティの形成に役立っている。研修参加者からは、研修を受けることによって職場環境の安全や会計の管理に気を配るようになったとの意見が出された。また、アジア通貨危機で地元に帰ってきた人が事業に参加する機会も発生した。洋服の製造を管理している女性は、以前はとうもろこし農家の主婦であったが、家内工業を始めて事業を拡大した結果、現在は20人ほどの女性を雇用する立場になり彼女は研修を受けることによってビジネス上の交渉の仕方、職場の安全管理を学んだと語ってくれた。 |
![]() 写真2 女性グループへのインタビュー
|